『ベニシアさんの四季の庭』菅原和彦監督インタビュー【前編】

公開まで約2週間とせまった某日、菅原和彦監督に、本作へかけた想いや現在の心境をインタビュー。テレビ番組や新聞・書籍などを通じ、既に多くのファンがいるベニシアさんの映画化ということの難しさ・面白さを語っていただきました。

 

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-『ベニシアさんの四季の庭』いよいよ近日公開ですが、どんな心境ですか?

 

そんなに心境は変わらないですよ。変わらずに、ずっと緊張しています(笑)。とくに、今はフィルムも完成して納品も終わっていて、もうどうしようもないわけです。自分は本当にやりつくしたのか?やるべきことをやったのか?と、時々不安になることはあります。

 

本作はドキュメンタリーなので、膨大な素材のなかからシーンを切り取っていく世界。ドラマのように脚本に則って積み上げるのではなく、落としていく作業です。本編98分という尺の中で、取捨選択を散々繰り返し、最善だと思ってやったことでも、あのシーンを残して本当に良かったのかな、と思うことはあります。

 

 

ただ、これまでテレビ番組を作ってきた経験としては、本番の放送を見たときに「これで良かったんだ」と自分で思えると、周囲からもご評価いただけることが多いです。だから、公開初日に自分がどう感じるか・・緊張しますね(笑)

   

-本作のストーリーはどうやって組み立てたのですか?

 

テレビ番組「猫のしっぽ カエルの手」の膨大な映像を編集マンの大泉さんと僕とでイチから見直す作業からはじめました。

 

ベニシアさんには、番組のテーマに沿いつつも、その場で感じたことを自然に話してもらっていたので、結果的に番組ではカットしたシーンがかなりありました。それらを掘り起こし、新たなシーンを加えることで、これまでとは違ったベニシアさんの魅力を表現するストーリーを組み立てていきました。

 

よく「映画は監督のもの」と言われますが、そういう意味では、本作は自分のものとは全く思っていません。これまで彼女を取材してきたスタッフ全員のものだと思っています。

 

 

-監督が特に気に入っているシーンをお聞かせください。

 

ベニシアさんの孫のジョー君が短冊に願い事を書くシーンです。あれは、ベニシアさんの娘でありジョー君の母親であるジュリーさんの病気が根底のテーマにあり、一見、重い話なのかもしれないけれど、すごくポジティブな気持ちで作ったシーンです。家族の力ってすごいよね、という。

 

ジョー君が大変とか可哀想だって思うのは簡単なこと。でも、本当にそうなの?というところまでいきたかった。だって、彼はものすごく愛されているのです。それこそがすごく素敵なことだと思った。

 

もともとあのシーンは、七夕の準備をするおばあちゃんと孫のふれあいをシンプルに撮るつもりでした。でも、カメラをまわしてみると、もっと深く、ベニシアさんと家族の有り様を象徴するようなシーンになった。そういう意味でも記憶に残っているシーンですね。

 

 

-先日、試写を拝見したのですが、あのシーンは私もよく覚えています。つらいことだけれど、同時にすごく温かさもあって、感動しました。前編はここまでとさせていただきます!ありがとうございました。後編では、ベニシアさんとのエピソードを中心にお話いただきます。